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結成された防火委員会に加盟する幼・少年消防クラブ貝を招集して、メーンステージにおいて楽器演奏、舞踊披露を行ったのち、クラブ員や保護者は勿論、来場者の参加を得て、全員が一体となっての防火餅つき大会を開催する。日頃は、餅をつく情景に接することのないクラブ貝が喜ぶのは当然だが、小さな手で餅を丸め、ビニール袋に入れ、防火パンフレットと一緒にクラブ員から防火餅を受けとる来場者にも好評を博しており、可愛い防火アピールは、防火意識の高揚に多大な貢献をしている。また、つきあがった餅の一部は、

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幼年消防クラブ貝が福祉施設へ巡回配布するのであるが、施設に入居しているお年寄りの中には、防火餅の配布を心待ちにしている方もいるとのことである。これらの広報活動は地域に浸透し、チビッ子消防マンとして町民に称讃されている。
少年消防クラブ員に対しては、毎年夏休み中の一日、地域内の公園を清掃したり、また、礼節を身につけるための規律訓練、火災発生時に備えての消火器による初期消火法、救急事象発生時の救急法等について職員が実技指導を行い、少年消防クラブ員としての防火防災意識の高揚を促している。家庭の主婦に対しては……
家庭における防火の担い手である主婦を対象として婦人防火クラブを結成し、クラブ独自の研修、施設見学等を実施する一方、消防本部、防災協会が共催する防火ビーチボールバレー大会にも出場している。同大会では、試合開始に先立って防火教室を開催するのが恒例となっており、天ぷら鍋火災の消火法、煙充満室内通過等を体験して、火気を取扱うにあたっての基本的な心構え、万一の出火時における適切な対処法等を再認識するよう指導し、家庭における防火意識を喚起している。
なお、本大会は、盛会裡に第八回を迎えている。
以上、防火外郭団体に関する予防広報活動について述べてきたが、消防行政機関として機会あるごとに防火防災講話等も実施しているものの、限られた受講者、短時間の講話は紋切り型の一方通行に陥り易く、広報担当者としても、この傾向の改善に苦慮しているところである。
おわりに
古代、ヒトは火を使うことによって他の動物を超越し、進化を遂げてきたといわれている。しかし、振返って見直せば、火の使用を習得したヒトは、果して幸福な面はかりであったとは言い切れない。ある時は、ちょっとした取扱い方法の誤りで、また、ある時は、不始末から、尊い人命さえも奮われてきた。
幸いにして、今日では概ね火をコントロールすることができるが、未だに火による惨事は後を絶たない。
ヒトは、忘却する生き物でもある。
ごく初歩的で些細な事柄であっても、一人一人が疎かにせず、また、その心構えを他の人にも理解してもらい、お互いに足らざるを補い合い、助け合って、より安全な明日を迎えるために、たとえ派手さがなく、大きな企画ではなくとも、防火の輪を広げ、つなげて行くよう努力する所存である。
(鶴英敏)

 

 

 

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